H-Hentenna for 14MHz
on JARL Field Day Contest 1995

14MHz H-HENTENNA

144MHzでの H-HENTENNA の実験(「HENTENNA 2」 FCZ Lab. 参照)から 10年以上が経った。長いようで短い・・といった気がしている。
Hヘンテナ の指向性化が可能であるとわかったときから、2エレ八木や HB9CV のようにフェーズラインやら、ガンママッチやらの複雑な機構を必要としないこの ANT の方がアマチュア向きなのではないかと考えていた。
また、 Hヘンテナ が生き残るとすれば、それは V/UHF帯ではなく HF用のANT としてであろうとも。

さて、前置きはこの程度にしてさっそくレポートである。
タイトルどおり、 14MHz 用の単一指向性型 Hヘンテナ を製作した。 element データは次のとおり。

Structure of this H-Hentenna

ブーム長 2.76m。これだけならコンパクトに思えるのだが、 element 長が 11mを超えるので、やはり巨大であるhi。
形態としては、以前 144で実験したものとは違い、 JA7RKB が後に発表した 前後の element 長に差があるタイプ になっている。
実製作(調整)上、スライド(マッチング) element を ナナメ にするのがしっくりこなかったのと、給電点を前後にずらす方式では FB比 があまり良くないというアンテナ・シミュレーション・ソフトの計算結果(後述)があったためだ。
実際の element は、大きさ(長さ)の異なる L型のアルミ材 3種を継ぎ足している。
各L型アルミ材のデータは、 L1=3cm+3cm/3m長、 L2=3cm+1.5cm/3m長、 L3=1cm+1cm/2m長。
つまり、次の図のようになっている。ご理解いただけただろうか?
Structure of element connection
element の接続には、4mmのタッピングビスを 3個または 2個使用。また、ブームにはL1と同じものを使用し、これもタッピングビス 3個で element を固定した。

さて、今回の element データの決定には、パソコンによるアンテナ特性解析ソフト( JA1WXB 作 "MMPC")を使用している。これは、 element の半径及びその線分の XYZ座標をデータファイルとして与えると、そのインピーダンス、利得、指向性パターン等を計算してくれるという夢のような(!)ソフトウエアである。 hi
このソフトについては、HAMジャーナル #95 他を参照していただくとして、とりあえず最初に私が行ったのは、「ヘンテナ2」に載った 144MHz用双指向性型 Hヘンテナ の寸法を入力することだった。
計算結果は実験とほぼ合っていて、利得は 3dB程度と出た。

次に、周波数を 50MHzにし、単一指向性化したデータをいろいろ作ってみたが、ここでいろんな特性がわかってきたのである。

  1. 指向性化すると、給電点インピーダンスが上昇し、200ohm 以上になってしまう
  2. F/B 比は 15dB 程度とれる(ただし、利得が若干犠牲になる)
  3. 利得は2エレ八木並( 5dBd 程度)で、なぜかそれ以上にはならない
  4. 周波数特性は、2エレ八木よりも広い(スペーシングにもよる)
  5. 給電点をスライド(マッチング) element の中央からずらしても、F/B比等に大きな影響は出ない
  6. element 間隔を狭くすると、利得は上昇するが帯域は狭くなる
  7. スライド(マッチング) element からの輻射のため、 F/S比は 2エレ八木よりも悪い
とまあ、こんな感じ。
50MHzでのサンプルデータ をひとつ示す。スライド(マッチング) element の直径=2mm。前後の element の直径=12mmとして計算した。
このデータで、利得=4.5dBd、F/B比=13.5dBとなっている。もう少し良いデータがあったのだが、残念ながら、消去してしまったようだ。
なお、給電点インピーダンスは 200ohmなので、Uバランとかトロイダルコアによる1:4のマッチングが必要。

さて、再び 14MHz用に戻るが、3種の L型アルミ材をつないでいるため、いわゆる「テーパー」がかかった状態になっており、HAMジャーナル #92の JF1DMQ の研究発表にもあるとおり若干「延長率」がかかっている。
この研究は、ある意味では「驚異的!」ともいえる内容なので、ぜひご一読されることをおすすめしておく。(このレポートは、JH1GNU小林氏のCQ出版社刊「釣竿アンテナ製作ノート」に収録されている)
つまるところ、50MHz用から 14MHz用へモディファイするには、単純に element 長に 50/14 をかけただけでは NG で、異径の element をつなぐ場合は「延長率」をかけなければならない・・ということなのだ。当初、どうしても FBな データが得られず、どこが悪いのか全くわからずに途方に暮れたのだが、JF1DMQ の記事を思い出して思い切って element を伸ばし、なんとかまともな計算結果にすることができた。

なお、本14MHz用 Hヘンテナの element 材はパイプではないため、計算上は次のような element 直径に換算している。
L1=24mm,L2=18mm,L3=8mm
この換算は、あまり正確ではないかもしれないが、単位長あたりの表面積 に着目して計算した値をもとにしている。 正確には、微分方程式を解くとかして求められると思うのだが・・・。

このHヘンテナの地上高 5.5mでの計算上のスペックは次のとおり。
利得 4.5dBd。 F/B比 9.5dB。(パターンは別図のとおり)
SWR特性は、2未満(1.5未満じゃないとこが残念)で 14MHz band をカバー。給電点インピーダンスは 260ohm。
実際の製作は、フィールドディコンテストの 2日前から始め、当日の朝、各パーツが完成。組立は移動運用地点において一発勝負で行うこととなった。


FIELD DAY CONTEST 1995

(NIFTYSERVE の某 - JA7YCR /OB -HomePartyにUPしたアーティクルからの抜粋 )

当日、15:00頃だったか、とにかくANTを組立てに現地に行った。移動地は市内の 200m程度の山の上で、自宅から 20分程度の場所。
直前までは、雨はそんなに強くなかったのだが、山に行ってみると、かなり激しく降っている。
何とか組めるだけ組んで(地上高 6m)、いったん帰宅。最終準備をし、食料調達のため平沢( JH7OVI )の店へ・・平沢、開口一番「あれ?またコンテストだすかぁ?」・・・なにをいっておるのだ。NIFTY 見とらんな!おまえ!
なんだかんだと誘われるまま LC630を見物に二階へ・・
おおっとぉ!こんなことはしてられんのだ。へば、まんず!と帰宅し、晩飯をかっ喰らう。

出発は 19時近かった。もう薄暗くなっている。現地到着して、まず ANTを上げ、地上高 2mで SWR測定。おおっ! 1.3くらいではないか。気をよくして 5m程度まで上げると、げげげのげ。2だぁ!
このころになると、もはや真っ暗に近い。 SWR は 2 のままコンテスト参加となった。20:30、ようやく一息ついて缶ビールを飲む。うまい!!

mobile shack on contest今年は心を入れ換えて(?)開始当初から CQを連発。おかげで 1時間程度は切れ間無くQSOができる。そう!この調子で行くと全国入賞も夢じゃない。
しかし、次の 1時間はペースががっくり落ちてしまった。1時を過ぎた頃には局数はまばらになってきて、02:30頃仮眠に入る。

起床は 5時。こんなのは仮眠とはいわないって?(^^;)それはさておき、いつのまにかいいお天気になっている。
その後、お昼近くまではコンスタントにポイントゲットしていけたのだが、昼過ぎからはなんか変な CONDXになり、12時台の QSOは 1局のみ。
暇なので、いったん ANTを下ろし、SWR調節を行ったところ、パソコンの計算値から 5cm程度ずれたところで SWRがほぼ 1になった。
11時頃から北海道が聞こえてきていたので、SWR調節後思い切ってビームを北に向けたら、8のニューマルチがとれる。らっきい。ラスト30分は、北ビームのまま CWでCQを出しまくり、なんとか心地よく(?)コンテストを終えることができた。

結果は、昨年の得点を倍増。228局 47マルチである。ちなみに、これは昨年の全国 1位にはおよばないが、2位よりも高得点である。
ANTを自作しただけのことはあったかな?・・と、一応の成果に満足している KPIであった。


RESULT

と、いうわけでスライド(マッチング) element の位置は当初の計算値ではブームから 71cmだったのだが、実製作/SWR調節してみると 76cmになってしまった。前出の図では実際の値を表示している。後に JA1WXBから「どうも計算値の方が共振周波数が若干高くなる」という話も聞いたが、それとの関係はまだ解明されていない。
コンテストの結果は、JARL NEWS 1995 12月号に載り、 JA7KPI は 14MHz電信電話部門で全国 1位を獲得した。1994年は全国 6位、東北 1位(Ant: 8mh DP)で辛くも入賞しているので、2年連続入賞ということになる。
Hヘンテナに関する補足事項としては、 F/B比は、計算どおり 10dBはあるようだった。利得の方は、DPも持参していたのだが、雨と、コンテストにハマっていたおかげで残念ながら比較する機会を逸してしまったのである。
また、計算によれば給電点インピーダンスは 260ohmであるため、トロイダルコアによるマッチングトランスを入れてあるが、このトランスについてはこの項では割愛する。
なお、前述のとおりブームもL型アルミ材を使っているが、これは「ねじれ」に非常に弱いため、少なくともブームはパイプを使うべきであろう。

今回はパソコンによるアンテナ特性解析ソフトを使ったが、 この手のソフトが実際のアンテナ製作についてもかなり有効であることを実感した次第である。
しかし、ソフトウエアがアンテナを発明してくれるわけではない。当然、現物も作ってくれないし、特性を発見してくれるわけですらない。 ここらへんを間違えるとなんにもできなくなってしまう。
と、いったところで、14MHz単一指向性 Hヘンテナ のレポート、一巻の終わり。


JA7YCR: 秋田県立能代高等学校無線部 は、現在コールサインは保持している模様だが、部員減のため実質的には活動していない主な活動は ARDF という状況のようである。
JA7YBR (能代工業高校電気部)はがんばっているのにたのだが・・残念だなぁ。

さて、件の Nifty Home Partyは、現在はインターネット上の掲示板として存続している。活動停止中である。


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